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2023年度第2回アキバテクノクラブオープンセミナーを開催しました                


講演の様子

2023/5/25                                    
2023年度第2回アキバテクノクラブオープンセミナー(第117回アバンフォーラム共催)
 
講師:大西康之氏
/ジャーナリスト・元日本経済新聞編集委員

『流山がすごい』
〜共に「シビックプライド」が育つまち〜

■ 流山に何が起きているのか
 全国の市で人口増加率1位。「流山市」にメディアの注目が集まり始めたころ、出版社編集員が長年「流山市」に住んでいた大西氏に「流山市」に何が起こっているのか書いてほしいと白羽の矢をたてた。もともと大西氏の専門は企業やビジネスで、地方や行政、都市開発は専門ではないが、流山住民として感じた「流山の変化」、4年間海外に住み、「まち」「自治活動」に対する見方が変わった一市民、ジャーナリストの視点で取材を始めた。
 さて、流山市に人口が増えたのはなぜか。ここで注目したいのが、流山市では「0〜4才児」が増えていることだ。大西氏の実感としても流山では1人っ子より、3人兄弟が多いと感じるそうだ。マンションであれば、都心で3LDKが買える価格で、流山では4LDKが買える。共働きで可処分所得の多い人が多いところから、流山に住み始めてから、二人目、三人目を出産する家庭も多いようだ。
 正しい「まち」ができれば、人口は増える。今の日本に必要なのは、どんな経済対策よりも人口増対策と大西氏は言う。そして、産みたいのに産めないのは、産めない環境を作り出している「人権侵害」だとも考える。
 こうして未就学児の人口増加を成功させた、流山の正しいまちづくりの「キー」は何だったのか。きっかけは「井崎市長」だという。 井崎氏は長年アメリカで都市開発に関わってきた。その井崎氏が日本に帰国するにあたり、ポテンシャルの高い居住地として選んだのが「流山市」だった。その流山の常磐道のインターにごみ焼却場ができることになり、いわば駅前にごみ処理場を置くようなものだと井崎氏を中心に反対運動をしたが、却下された。このままでは、乱開発が進むと危惧した井崎氏は仲間の支援をうけて市長に立候補する。結局落選したものの、活動仲間の強力な後押しもあり、市長選に再挑戦することになり、今度は当選。現在6選目を迎えている。
 井崎市長の施策で特筆すべきは「選択と集中」だ。選択のために「マーケティング課」を設置し、市民の本当のニーズを探り当てることを重視した。この結果生まれたのが「送迎保育ステーション」。詳しくは「流山がすごい」をお読みいただきたいが、共働きの親のリアルな「困った」に寄り添って作られたこの施策が口コミでひろがり、共働き子育て世代を流山に呼び込むことに成功している。また大事な仕事は、「プロに任せる」というのも特徴だ。マーケティングにプロを使い、ポスターのコピーも有名コピーライターに依頼している。営団地下鉄の駅にこれでもかと貼った「母になるなら流山」のコピーは子育て世代にささった。もちろん子育てにフォーカスした施策は、高齢者の切り捨てかと反対する向きもあったが、「どこにでも均等に税金を使い、人口が減っていくのを指をくわえてみているのか、子育て世代に集中して税金を使い、人口を増やし、税収を増やすのか。」未来を見据えた施策であることを訴えたという。
 流山市の変化は、LocalとNationalの関係の変化ともいえる。 以前ベットタウンだった流山は、都心(National)で働いて寝るための場所だった。今は、都心(National)から離れ、Localでの生活に目覚めた市民が増え、自分たちの「まち」を作ろうとするCivic Prideが育っている。 これまでの効率を求める東京一極集中のまちづくりでは人は呼べない。これからは、Localに焦点をあてた自分たちの「まち」作りが人を惹きつけることになるのだろう。 流山市の繁栄はそんな変化を示しているのかもしれない。

(写真をクリックいただくと講演の様子がご覧いただけます)

講演の様子

■ コメンテーターからは
  コメンテーターからは「保守派の多い土地柄では、これだけ子育てにフォーカスした施策はつぶされるのでは?」「流山は30年後も住み続けられるまちとなれるのか」「ナショナルとローカルの関係性について、どう考えるか。」「女性が出産しても働き続けられる環境のためには、規制緩和や地方への権限譲渡が必要ではないか?」といったコメントが寄せられた。
 大西氏からは、「流山は、常磐自動車道が通ることになったとき、排ガスなどの環境問題から女性たちが反対運動を起こし、流山周辺の自動車道を地下化させた歴史があり、もともとCivic Prideのあったまちだった。そのように自ら動く市民・主婦が井崎氏を応援しているので思い切った施策ができている。また、保育の楽園から学童の楽園へは道半ば。今後はその先のニーズにも応えていくことが持続可能なまちづくりにとって大事だ。そして、ナショナルとローカルの関係については、もう中央集中型の政治構造は古くなっており、グローバルとローカルが直につながる時代であり、地方に権限をもたせなければきめ細かな行政サービスは難しい。」と語られた。
 流山についていくらでも語れる勢いの大西氏と流山の動きに高い興味と感心をもつコメンテーターとの濃いやり取りで、セミナーは予定の時間をオーバーしてお開きとなった。

■ リアルとオンラインのハイブリッド開催
 今回のセミナーは、初めてのハイブリッド開催となった。コメンテーターも参加者もリアルとオンラインそれぞれで参加があり、配信環境の設定など課題はあったが、講師とリアルに語り合えた会場、時間と場所を選ばず、参加できるオンライン、それぞれの良さがいかされたセミナーとなった。

(写真をクリックいただくと講演の様子がご覧いただけます)

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