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  2016年度第6回アキバテクノクラブオープンセミナーを開催しました
               


ご講演の様子

2016/10/13
2016年度第6回アキバテクノクラブオープンセミナー
       
 
【モデレーター】
小黒 一正 氏
 〔法政大学経済学部教授/アバンアソシエイツ シニアリサーチャー〕

【パネラー 】
武内 和久氏〔コンサルタント/東京大学非常勤講師〕
吉竹 弘行氏〔千葉商科大学人間社会学部教授〕 
山崎 敏〔トシ・ヤマサキまちづくり総合研究所代表〕  
尾ア 雄氏〔ジャーナリスト/老・病・死を考える会世話人〕 

    
テーマ:2025年、高齢者が難民になる日
    〜『ケア・コンパクトシティ』〜という選択〜      

 

■ ケア・コンパクトシティが日本を救う
 

 平成28年度第6回目のオープンセミナーは、アバンアソシエイツによるアバンフォーラムとの共催形式で開催され、9月9日に日本経済新聞出版社から発刊された『2025年、高齢者が難民になる日〜ケア・コンパクトシティという選択〜』の著者グループ5人によるパネル討議が行われました。
はじめに、潟Aバンアソシエイツ顧問の平泉信之氏より趣旨説明をいただいた後、各著者より、執筆ご担当部分の概要について簡潔にご説明いただきました。

 一人目は、「第2章:日本の医療と介護に、何が起きているのか」を執筆された、武内和久氏です。人口減少・高齢 化、国や自治体の財政難、高齢単身化を含む家族の変容、貧困と格差を生む中間層の融解、アジアとの融合といった、「見えている」5つの変化の中で、医療・介護に係る制度基盤がぐらつき、国からの「遠心力」が働き、各自治体での解決が委ねられてきているとのこと。また、「資源(ヒト・モノ・カネ)は減り、ニーズは拡大・多様化する中、『質』と『生産性』をどう両立させるのか?」、「『治し、支える』、『自分らしい死』のためのケアをどう実現するか?」という、医療・介護への2つの本質的な問いに対応するべく推進されている、医療・介護政策のトレンドについても概説いただきました。

 二人目は、「第3章:地域を、医療・福祉を誰が『経営』するのか」を執筆された、吉竹弘行氏です。生命・生活・生涯における質の向上につながるケア・コンパクトシティは、ハードウェアやソフトウェアに加え、活動推進に向けた人間関係をうまく機能させる仕組みであるヒューマンウェアが重要とのこと。こうしたヒューマンウェア構築の成功事例として、深沢村長をキーマンとする、岩手県旧沢内村における地域包括医療計画策定等を通した全国初の乳児死亡率ゼロの達成や、公立みつぎ総合病院の山口院長をキーマンとする、広島県旧御調町における国保病院と健康管理センターの一体化を通した在宅寝たきり老人比率の低減が挙げられました。加えて、ケア・コンパクトシティの人材戦略として、千葉商科大学でも行っているが、大学による学生と社会人に対する医療・福祉サービス提供に係る経営者の育成と、まちづくりの司令塔機能整備のための推進基盤の整備が特に重要であると説かれました。

 三人目は、「第4章:まちづくりはヒューマンスケールで」を執筆された、山崎敏氏です。人口規模に係らず、高齢化していく地域住民のニーズに対応するべく、住宅、医療・福祉機能を核として、住宅、商業、公園やスポーツクラブ等のその他機能を、歩ける距離にヒューマンスケール感を重視しつつ形成することが必須とのこと。また、まち全体のマネジメントが大切であること、医療福祉の一体化や地方移住等、やれることは何でもやってみること、各自が住まう場所・医療の在り方・人生の幕の引き方まで考えてみることに加えて、こうした医療福祉まちづくりの推進を担える良き首長を選択する重要性についても説かれました。

 四人目は、「第5章:地域の共同体マインドを共有する」を執筆された、尾ア雄氏です。お母様を4年間介護された体験者の本音として、縦割り構造の弊害である地域包括ケアの不在や、低負担・高福祉はもはや望めないことを受け入れる覚悟ができていない市民や被保険者の問題が提起されました。また、地域包括ケアシステムを実現するためには、政策・ルール・規制のフレームワークの協調と連携といった「システム的統合」、事業者団体・専門組織等の間でのネットワークや戦略的連携といった「組織的統合」、事務管理業務・予算・財政システムの提携といった「管理的統合」、情報とサービスの協調又は患者のケアの統合といった「臨床的統合」を、各ステークホルダーの意識レベルで統合する「規範的統合」が必要であると説かれました。

 最後は、「第6章:『ケア・コンパクトシティ』が日本を救う」を執筆された、小黒一正氏です。限界が近づく財政、首都圏を中心として急増する都市部高齢者、2050年には居住地域の6割以上で人口が半減するという「消滅する自治体」といった課題に対する解決策として、「地域包括ケア+コンパクトシティ」が構想化された経緯について説明をいただきました。また、その推進財源例として、年金50兆円の1%削減により年間0.5兆円を捻出し、介護施設の整備費に充てるという、引退世代内での再分配の案をお示しいただきました。これによると、今後4年間で約15万戸の供給が可能となり、2020年時点で特養の真の入所待機者と予測される約12万人を十分収容できるといった試算についても解説いただきました。


(写真をクリックいただくとご講演の様子がご覧いただけます)

ご講演の様子

■ 次の一歩を踏み出すために
 
 次に、小黒一正氏をモデレータとし、パネル討議が行われました。 はじめに、「地域包括ケアの現状をどう評価するか」とのお題に対し、パネラーからは、国により政策は掲げられているものの、各自治体、医療・福祉機関や住民に至るまで、「自分のこと」として十分に捉えられておらず、運用段階には至っていないなど、否定的な意見が太宗を占めました。

 また、こうした状況における具体的課題として、介護人材等の人づくり、地域におけるリーダーの発見、取り残される地域への対応、といったキーワードが出されました。

 次に、「人材確保と育成の課題は?」というお題に対し、パネラーからは、介護サービス提供に係る経営者の不足、あらゆる世代での介護教育の必要性、テクノロジー等による介護の効率性向上や予防医療等による介護需要の縮小といった観点が出されました。

 また、「施設・まちづくりの課題は?」というお題に対しては、九州の中間市における地域包括ケア・コンパクトシティの先進事例を通して、30年といった長期間を要するまちづくりに対し、首長に加え、各ステージごとに適した司令塔が見いだされ、継続的に推進されることが重要との見解が示されました。

 更に、「では、どうすればよいのか?」というお題に対し、パネラーからは、負担増を言い出せない政治を変える、各地域でハブとなる人材を見出す、スマート・シュリンクの先進事例をつくる、ケア・コンパクト的な街に住むなど、住むまちを自ら決めることで政治を動かす、といったご意見をいただきました。

  加えて、医療福祉のまちづくりに対する住民の関与を高める方策や、広域的観点による施設配置の在り方など、会場からの興味深い質問を受けた密度の濃い意見交換も成され、その後の活気溢れる交流会へとつながってゆきました。

(写真をクリックいただくとパネルディスカッションの様子がご覧いただけます)

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