2011/2/16 AICOS2010 vol.6
『ものづくりイノベーション
〜痛くない注射針を生んだ町工場の秘密〜
』
岡野 雅行氏
/岡野工業株式会社 代表社員
<モデレーター>
妹尾堅一郎氏/アキバイノベーションカレッジ 校長役
東京大学大特任教授、NPO産学連携推進機構理事長
■「人がやらないことをやる」
実は秋葉原好きでもある岡野氏が率いる町工場は従業員5人で、納税はなんと1億7000万円!なぜその売上高が可能か?その秘密に迫る講演会となりました。
まずメッキしていない「幸福の鈴」を参加者全員が頂戴致しました。45年前に3年がかりで作成した金型で、1枚の板からつくる繋ぎ目のない一体物の貴重な鈴です。冒頭から気前の良さを発揮されましたが、この鈴の特許はすでに切れているが、誰も真似できない状態だそうで、やはりこの技術力の高さが一番の特徴と思われます。
町工場が存在する国は、世界に5カ国(ドイツ・イタリア・フランス・イギリス・日本)しかないそうです!しかも岡野工業は、見積なし、残業なし、水光熱を倹約しておいしいものを食べる(経費は使う)という、経営についてもかなり特徴のある町工場です。
「人がやらないことをやる」このポリシーに基づいて、マイクの網も43年前にソニーの依頼で岡野氏が日本で初めて作ったそうです。金型屋がプレス屋を通さずに直接メーカーと仕事をすることも、金型屋がプレス屋をやることももちろん御法度の時代に。だから、プレス屋が断ったりできなかったりする仕事のみをやることにしたそうでが、金型を作ってメーカーから買ったプレス機械と合わせてプラントとしてメーカーに売却したり、いままでない完全自動機を作るなど、仁義を切りながらも、誰も考えないきちんと儲けるアイデアも豊富だった様です。
ただどんなに儲かる仕事でも、価格競争が起こったり技術がすたれる程長く続けたり、欲を出して工場を大きくしたり…そうしなかったことが重要な経営判断ポイントの様です。リチウムイオン電池の作製にも携わった際も、当初特許を持っていた旭化成が宣伝してくれましたが工場の規模は変えずに製造を続け、試作から15年作ってきたプリウスの電池ケースも規模の拡大にともない金型ごとトヨタの関連会社に譲ったりというように、成功した仕事にこだわらない「見切り」が必要だそうです!
なんとも潔いですね。
(写真をクリックいただくとご講演の様子がご覧いただけます)
|